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田中琴葉や喜多見柚が好き

「はこぶものたち」について

とてもよい話だった。メッセージ性に富んでいて語る価値があるシナリオであったし、あとなんとなく自分で言語化がしやすかったという卑近な理由もあって、取り急ぎ思ったことなんかをまとめておきたかった。ちなみに下書きにはピトス~樋口LPの話が全然進まない状態で溜まっている。あれ参照範囲がほぼ全コミュだから骨が折れるんだ。

 

端的に言えば、「『輝きをみんなに届けよう』とあるが、どういうことか。」という問いについて誠実に向き合った話だったように思う。それはイルミネーションスターズが4年間をかけてステージを上がってきたことによって、彼女たちが最初に唱えた合言葉であるこのフレーズの解像度を高めることが必要な時期になったということであろう。プロデューサーの「未来にしていかないと」という言葉通り、イルミネがまた一歩先へ進んだことが感じられるコミュだった。

 

今回のシナリオでは全編を通じて、世の中がそんなにうまくできてないことが何度も何度も描かれる。真乃がプロモーションするデリバリーサービスには配達員のマナーがなってないと評判が立ち、一方で割引キャンペーンには配達員の側から悲鳴が漏れる。めぐるの紹介した環境志向ファッションブランドにも「エシカルは欺瞞」というコメントがつく。そうした描写の積み重ねの果てに、イルミネのハーフタイムショーによってサポーターとファンの間に軋轢が生じ、「届ける」というワードが重なって軸となり彼女たちの前に喫緊の課題として立ち上がってくるというつくり。う、上手い…。あと単純に「そういうこと」の描写力が。

 

いいこと一つするのも儘ならないということを突き付けられた3人がスタジアムで考えるところが回答編になる。ここのロジックが美しい。「応援することは誰かのことを知るってこと」、それは今まで「みんな」として捉えていた集合が畢竟「ひとりひとり」の集合であって、そうした個々人に対して思いを馳せ、理解を深めることが届けるために求められるということなんだと思う。このシナリオの最後が兄やんからイルミネへという小さな届け物で締められるのも、その個のやりとりにこそ本質が詰まっているんだという示唆だと感じた。大きくなったイルミネがよりたくさんの「みんな」に向き合ってくときに今回のことが糧になるのだろう。そういえば理解を深めるとか相手を知るとかについては「くもりガラスの銀曜日」で取り扱われていたテーマだったので、この辺を繋げてみるのもいいかもしれない。つくづくイルミネの向き合うテーマの途方もなさに嘆息してしまう。

 

これはアイドルとしてのイルミネに限らず、今回モチーフになったりならなかったりした出来事への言及と見て取ることもできる。究極的には自分のためであろうと、届けようと行動することはきっと誰かのためになるという信じていたい。そして、その中で様々な「ひとりひとり」を知って視野を広げていくことが、真に「いいこと」に近づいていくために重要なのだろう。最後の「応援するから」という台詞は、まさにそんな今回のテーマを有言実行したシャニマスから我々への届け物であったと思う。

 

この辺りからどんどん脈絡がない話になっていくが、このシナリオまだまだ別の角度からも語れそうである。一番目立つところでは、6話のイルミネ報告会のところはあんまり回収していない。みんなと個人の対比とかあるんだろうなとは思うけれども、もうちょっと色々考えたり、他の人の感想を見てみたりしたい。後は…まあいいか、真乃の衣装がフードデリバリーのプロモーションに使うにはえっちすぎない?

 

個人的にイルミネのシナリオは明確なテーマ設定と鮮やかな回収にしばしば感心させられており、いつも期待を膨らませながら待っているシナリオのひとつである。今回の「はこぶものたち」もその哲学からテーマの落とし込み、細部の完成度に至るまで、自分の好みにもあっており非常に楽しませてもらった。今年も始まったばかり、5年目に突入するシャニマスを益々楽しみにしている。